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回想録 京急編

 京急に初めて乗ったのは小学校の高学年の頃、雑色駅の近くにある鉄道模型店を訪ねたときであった。京浜蒲田から一駅であったが、各駅停車にも関わらず、そのスピードの速いこと。あっという間に80Km/hを超えて民家の軒先をかすめるように走る様は、地元の東急東横線や目蒲線とは全く違っていた。京浜蒲田駅のホームでは快速特急や急行をやり過ごす際に、しげしげと顔を観察した。
 当時の主流は1000系であったが、窓の高さが揃っている初期型と行き先表示窓を独立させた為に窓の高さが不揃いになってしまった後期型があったが、やはり初期型が好きだった。そして、旧国鉄の153系と同じ程度に左右が後退しているところが気に入った。また、窓の固定は当時主流のHゴム支持ではなく、窓にふちどりが無くすっきりした姿も初めて見るものだった。貫通扉の周囲には幌座のような銀色の飾りが付いていて締まりはあるのだが、幌を付けたら似合うだろうなと思っていた。貫通扉の窓の幅は細い方が好みであったが、この1000系のように中途半端でなく、目いっぱい広くとったものも悪くなかった。ほかの旧式車両のどれを見ても窓は広く高く軽快に見え、それが京急の伝統であることが理解できた。
 1000系の次に登場した700系はちょっと気になる存在だった。それは貫通扉が旧国鉄の153系と同じようにツライチで滑らかに見えることと、その窓の幅が細めで見た目のバランスが良かったことだ。しかしながらその後、幅も高さも目いっぱい広げる改造を受けて、鼻だけが大きくなったようで頂けなかった。なぜそんなことをするのか疑問でならなかった。
その後も何回か京急には乗ったが、東急に比べると顔のバラエティが乏しく、楽しみは多くなかった。

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